霧島市には、鹿児島県内唯一の「マタニティリハビリ外来」があります。

どんな人が、どんなときにお世話になるところなのか、取材に行ってきました。

今回、取材に応じてくださったのは、看護師の松井さんと、理学療法士の愛下さんです。

産前産後のリハビリテーションを、医療機関で外来を設け、保険診療しているのは、鹿児島県内ではここだけだそう。

 

どんな人が受診しているの?

訴えの多い症状を、教えていただきました。

①尿漏れ

②腰痛・恥骨痛

③腱鞘炎や肩などの痛み

そのほか、モッタリ感など・・・

ん?モッタリ感ってなんですか?

「股の間に何かが挟まっているような感じがしたり、モッタリと鈍い感じがするなどの違和感ですね。」

尿漏れ、などの表現しやすい症状だけじゃなくても、違和感や痛みがある場合は相談に応じてくださるそうです。

 

ママたちの中には、「こんな症状でも受診していいのだろうか?」と遠慮していたり、

周りに「よくある症状だよ。そのうち軽くなるよ」と言われて放置してしまっているうちに悪化してしまう方も少なくはないとのこと。

電話で相談をすれば、リハビリが必要そうかどうか、診察が先に必要そうな場合には、どの病院に相談すればよさそうかということも含めて相談にのってくださるそうです。

「医療機関ですので、美容のためとか、症状はないけど予防のためなどの受診はできませんが、

痛みなどの症状がある場合は、迷っている段階でも大丈夫です。まずは気軽にお電話ください。」

 

リハビリを受けるためには何が必要?

「マタニティリハビリ」を受けるためには、医師からの紹介状が必須だそう。

紹介状をもらったら、電話で予約をします。

 

小さい赤ちゃん連れや、子連れの方は、予約時に相談に応じてくださるそう。

「もちろん預けてきていただいたほうが、集中して短時間で終わらせることができます。

仮にお子さん連れの場合でも、安心してリハビリを受けていただけるように心がけています。

感染症対策など、こちらの準備もありますので、事前にお伝えくださるようにお願いしています」とのこと。

ちなみに、霧島市には1歳以上のお子さんを安価に預かってもらえる「キッズパークきりしま」という施設もあります。

 

紹介状をもらったら予約。いざ「霧島市立医師会医療センター」へ

霧島市正面玄関を入って右手の受付を済ませ、診察&問診へ。

診察は、脳神経外科の医師が、問診は外来看護師の松井さんが担当してくださいます。

「実は、私自身も、産後に愛下さんのリハビリを受けた患者の一人なんですよ。」という松井さん。

産後の痛みなどの不快な症状が、どんどん良くなっていったときに、自然と笑顔が出てきたそうです。

「産後は、ひっきりなしにお子さんの世話もあって、痛みがあるだけで、子育てが億劫になることもあります。

経験したからこそ、無理をする前に、早めに治療をして笑顔で子育てしてほしいと思いながら、問診を担当しています」

 

問診の内容は、今の症状や、体調だけでなく、既往歴(突き指などの小さな怪我まで!!)や、

どんな部活をしていたか、生活全般についてなど、くわしく聞いていくそうです。

リハビリの愛下さんのところでは、治療をしながら、身体のことをもっと詳しく聞いていきます。

外来の問診では、そこにうまくつながって、スムーズに治療が進むように心がけています。」

 

生活に追われていたり、自分のことは後回しでなかなか受診をする時間が作れなかったり、というママたちの大変さがわかるからこそ、

安心してリハビリを受けられるように、スムーズにつなぐことを意識しているそうです。

 

 

松井さん自身、今も、愛下さんに相談しているそうです。

チームワークのよさが伺えました。

 

問診が終わったら、リハビリのスタート

じっくり問診の後は、リハビリテーション室へ移動します。

入り組んだ建物内を、地図を見ながら移動。

広いリハビリ室、作業療法室の一角に、畳のスペースがあります。

このスペースを中心に、細かな質問をしながら、体の状態を評価し、治療を進めていきます。

治療は、バキバキと関節を鳴らしたり、マッサージを続けるような感じではなく、前屈をしたり腕を上げたり、足を曲げ伸ばししたり、と、とてもソフトな印象。

産後のデリケートな体でも、負担がすくなそうです。

帝王切開の人の傷跡の保護や、痛みの緩和についての相談も得意分野です。

 

愛下さんが、治療をしながらママたちに質問する内容は、外来看護師の松井さんによる問診よりも、さらに深いものが出る場合もあるそう。

「たとえば、産後に腰痛が出たという訴えがあった場合、産前産後のダメージそのものだけでなく、

根本的な原因が、腰や骨盤以外の部分にあるかもしれない、ということも含めて丁寧に聞いていきます。」

それは、昔のつき指だったり、足首の捻挫だったり、意外なところに隠れている場合もあるとのこと。

 

「自宅のTVの位置をお伺いすることもありますよ」

自分の意識していない、自分の体の癖。

それを把握しながら、よりよい治療を進めてくださるそうです。

こんな治療ですが、意外にも治療は長引かず、1~2回ですむ方が多いのだそうです。

「痛みを解消しながら、今後痛みが出ないために、簡単に自宅でできる運動もお伝えしています」

 

マタニティリハビリ外来が目指す未来

産後の体はデリケート、というのは各国共通。

日本やアジアでは、昔から産後はとにかく養生するという考えが主流です。

産後無理をすると、更年期が怖いよ、なんていう言葉をかけられたママも多いと思いますが、

今は社会的な環境の変化もあり、ゆっくり養生できる環境ではないママも増えてきました。

 

理学療法士の立場から、愛下さんがママたちにお話していることもあるそうです。

「一度の妊娠出産で、平均2.5センチほど骨盤底が下がるというデータがあります。

若いうちは、筋肉にもしなやかさがあり、そのときそう症状が出ないことや、多少無理すればどうにかできることもあります。

しかし、筋肉のしなやかさが減ってくる年代になったころ、子宮脱や尿漏れなどの症状として出てくる場合もあります。

自分の身体に関心を持ち、予防に努めることや、症状が出たときには早めに専門家へ相談するほうが、長い人生を快適に過ごすことにつながりますよ」

 

特に産後1~2ヶ月までの間に気をつけてほしいこととしては、

骨盤底の筋肉に重力がかからないようにすること(できるだけ横になる)

腹筋を使う作業は避けること

体重を片方にかける姿勢を避けること

左右非対称の動きはしないこと

ものを跨ぐような動作をしないこと

 

「海外では、翌日には退院したり、すぐに仕事復帰している」という情報もありますが、

海外では、出産前から、理学療法士などのウイメンズヘルスの専門家が、

制度の中で、出産や産後に向けた身体作りのお手伝いをしたり、医師と一緒にお産のときの誘導を行っていたりします。

産後にそなえて身体作りをじっくり行っていく制度が整っているからこそ、産後の状態が違うともいえるとおもいます。

 

 

愛下さんは、痛みで困っている方へのリハビリに取り組む傍ら、

健やかな産後や、予防に向けた取り組みとして、多職種を集めたウィメンズヘルスの勉強会なども積極的に開催しているそうですよ。

 

「これからの人生を豊かに過ごすために、若いときだからこそ、専門家による適切な治療を受けて、身体と心を健康に保ちましょう」

 

▼霧島市立医師会医療センター マタニティリハビリ外来

mama-babyreha@hayato-mc.jp

0995-42-1171(代表)